第78回 アカデミー賞
主演男優賞 ホアキン・フェニックス
主演女優賞 リース・ウィザースプーン
編集賞
衣装デザイン賞
音響賞
全5部門ノミネート作品
あぁ、なんだか羨ましいなぁ・・この二人。
見終わったとき、そんな感想が真っ先に思い浮かぶステキな映画だった。
描かれているのは、私が生まれる前の時代。
でも、その頃をあまり知らなくても十分楽しめる作品だったよ。
<STORY>
1944年。12歳のジョニー・キャッシュの家族は綿花栽培で生計を立てながら、貧しい日々を送っていた。
そんな日々のせいからか、酒に溺れる父・レイ(ロバート・パトリック)は時折家族に暴力を振るう。
しかし、ジョニーは優しい兄・ジャックと歌が好きな母の愛情に守られながら過ごしていた。
働き者のジャックは綿花栽培だけでは貧しい家族のために、失業救済局作業場でも働いていたのが、そこで事故が起き、亡くなってしまう。
1952年。空軍に入隊したジョニー(ホアキン・フェニックス)は家族と離れ、ドイツへ向かう。
アメリカに残してきた恋人・ヴィヴィアン(ジニファー・グッドウィン)に電話でプロポーズ。
退役して帰国するとすぐに、ヴィヴィアンとの新婚生活を始めた。
家庭を支えるために訪問販売の仕事を始めたジョニーだったが、うまくいかず家賃を払うことすら困難な状況になってしまう。
少しでも生活費を稼ぐために、趣味でやっていたバンドのレコードを製作することを決心。
必死になって歌った姿を認められ、ジョニーに歌手として活動する道が開けた。
その時代は、ジョニーの他に、ジェリー・リー・ルイス、エルヴィス・プレスリーがいる時代であり、ジョニーが昔から憧れてたジューン・カーター(リース・ウィザースプーン)と共演する機会も巡ってきた。
初めて会ったとき、「あなたの歌が好きよ」と言われたジョニーは、ステージで会うたびにジューンに話しかけるようになる。
気が合う二人は、時にはステージで共演するようにもなり、ジューンに惹かれていくジョニーだったが、お互い結婚し、子供がいる間柄だった・・。
ウォーク・ザ・ラインとは、「まっすぐ歩く」という意味があるらしい。
ただひたすらに、ジューンという女性に向かって歩き続けたジョニーの物語なの。
私が生まれる前の話なので、ジョニー・キャッシュのことは良く知らなかったし、奥さんのことなんか全く知らないんだけど、彼の歌に“I Walk The Line”という歌もあるらしく、そこから来ているみたいね。
でもねぇ、まっすぐ突き進んだ訳じゃないのよ。
二人が出会ったときには、お互いに別の人と結婚していたし、子どももいたし、離婚は罪悪という時代だったし。
その上、ジューンに惚れてしまったジョニーの家庭生活は当然のように破綻してしまうし、薬や酒に溺れてしまうしね。
なんでだろう・・、それでも、このジョニーはすごく魅力的。
「あぁ、どうしようもない」、「あぁ、だらしない」と思いながらも、「あぁ、しょうがないな」と思ってしまうところがある人。

それは、彼の「正直な心」にあるんじゃないかと思うんだよね。
明らかに、ヴィヴィアンといるときとジューンといるときの表情の輝きの違いや、ヴィヴィアンがジューンに嫉妬して写真を持ち去ったときの彼の怒りの表情には、その時の彼の正直な気持ちが出てる。
それは、ジューンといるときには目が輝き、ヴィヴィアンがジューンを中傷すると、彼は妻としての立場を理解しようとするなんてもんじゃなく、「俺のジューンに手を出すな」という感情が怒りを溢れさせる。
妻のいるジョニーから離れていくジューンと、明らかに恋する相手ではないヴィヴィアンの間でどうにもならなくなると薬に溺れてしまうのは、そこから逃避したいから。
それってすごく卑怯。
それでもジューンが「どうにかしてあげたい」と見放さなかったのは、ジョニーが馬鹿なほど正直だったからじゃないのかな。
もちろん、人として、キチンと話し合って、離婚して正面からジューンとやり直せば良かったんでしょう。
でも、そんな人はジョニーのような歌は歌えない。
だからころ、ジョニーは魅力たっぷりなの。
そんダメ男ジョニーを温かく見守ろうとするジューンの両親にも心が救われるんだよねぇ。
ジョニーはジューンに「君は僕の天使だ」と言ったけど、本当にジューンがいなかったらもっと早死にしていたかもしれないよね。

そんなジョニーを魅力的に演じたのは、今回アカデミー賞にノミネートされているホアキン・フェニックス。
彼を見ていると、ジョニーと兄のジャックの関係が、ホアキンとリバー・フェニックスの関係にどうしてもダブって見えてしまう。
家族を支えるいい子だったジャック、家族を支えながらスターになったリバー。
その影で天真爛漫に育ったジョニーと、同じく子役俳優として名が売れ始めたリーフ・フェニックス。
ジャックが事故で死んだとき、「なんでいい子が死んじゃうんだ」と嘆く父。
リバーが薬物過剰摂取で死んだとき、現場にいたリバーの弟として思わぬ脚光浴びてしまうリーフ・フェニックス。
ジョニーの人生は、「ジャックを好きだった父に認められること」が常に心のどこかにあった。
兄の死後、しばらく活動を休止し、リバーの弟して知られた名前を改名して俳優業を再スタートすると、アカデミー賞にノミネートされるまでに成長したホアキン・フェニックス。
ジョニーとホアキンは、そんな風に、ついダブって見えちゃう。
子役の時、『バックマン家の人々』に出演していた頃から知っていた私としては、ジョニーが兄・ジャックについて語るとき、ホアキンがリバーについて語っているような気にもなってしまって、余計にグッときちゃった。
ジューンを演じるリース・ウィザースプーンって、今までコメディに出てる作品しか観たことなかったから、ちょっと不安だったんだけど、すごくいいねぇ。
歌声なんかすごくキレイ。
ビックリだったよ~。

酒に溺れ、薬の溺れ、まっすぐに歩くことすらできなかった男が、まっすぐに歩けるようになったとき、そこには幸福が待っていた。
うーーーーん。ステキ~☆
これが実話ってのが、またまたいいじゃないの~。
何度かつまづきながらも、お互いが、お互いの場所に戻ってくる。
そんなステキな恋愛をしたい人にオススメの一本。
ウォーク・ザ・ライン 公式サイト