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2008/12/07

錦繍 / 宮本 輝・著

軽い気持ちで手に取ったのですが・・・

『新潮文庫の100冊。勝手に読破マラソン』8冊目は、この宮本輝の『錦繍』でした。
そんなに古い本でもないし、軽く読めるかなぁ・・・なんて、思って読み始めたのですが、どっこい、泣きながら読んでいました。

メールではなく、昔懐かしい文通です

主人公は二人の男女です。
彼らは、元夫婦で、ある事件をきっかけに離婚します。
その二人が、10年後に偶然、蔵王のゴンドラでばったり再会して、そこから、二人の文通が始まります。
この本には、その二人の往復書簡が綴られています。

手紙って書かなくていいことを描いてしまう・・・

手紙って、書いている人間の本質が出ると思うんです。
夜、遅い時間に、一人、部屋にこもって書く手紙って、相手と自分だけの空間で、周りの目が一切入ってこないから、実際会って、面と向かっては言えないようなことも言えてしまう。

ただ、ちょっと世間知らずだったんです

女性の主人公は、亜紀といいます。
世間知らずのお嬢さんで、賢く生きているつもりなのですが、人を信用しやすく、そのため、その人の裏側の顔で起きていることに気付かず、いつも、気付いたときには大惨事になってしまっています。
そんな彼女の、手紙を読んでいて、
「この人、私だ」
と思ったんです。

パートナーが浮気していても、他に好きな人がいても、簡単にだまされてしまう可能性が高い女。
その、あまりにも簡単に人を信じてしまうお人好し、世間知らず、鈍感さが、まるで私じゃないかと思い、さらに亜紀は、離婚した男に、久しぶりに再会したら、未練たらたら。
表面的には恨み節言ってても、根っこには未練が残っている。
その未練が分かるだけに、亜紀の書く手紙を読んでるだけで泣けちゃうんです。
あぁ、今でも好きなんだなぁって。
本当に好きだったんだなぁって。
きっと、それは、私だけではなく、多くの女性が、
「これは、私」
と思うはずで、それぐらい、人間が人間臭く描かれている本なのです。

やはり、その人間臭さは、手紙は人間の本性が出るという性質からきていると思うんです。

元夫との文通がもたらしたもの・・・

結局、亜紀は、その世間知らずのお人よしから、背負わなくても良いような苦労を背負ってしまう。
この手紙の中で、彼女は、それを“業”だといいます。

生まれ持った逃げられない運命のようなものですよね。

そこが、亜紀が、自分の業だと気付いたことが、この往復書簡が亜紀にもたらした結果だと思うんです。
10年前に、夫に浮気されたことも、障害のある子がいることも、そして、今も10年前と同じようなことが起きようとしていることも、全部、自分が招いた“業”だと。
それは、この往復書簡が彼女に与えた成長だと思うんです。
過去を清算することで、自分の人生を受け入れることができた。

振り返ってみると、ひどいと思った人生も、これが、自分の業から生まれたものなら、そう悪くも無いかも。
亜紀は、そうして自分の人生を受け入れて、一つ決断をするのですが、これからの人生、きっと、素晴らしい未来が待っているはずです。
人生、自分の業が招いた苦労もあるけれど、その分、幸せもはるはずだから。
私も、亜紀と同世代だけに、なんだか、大きくうなづけるお話でした。

12月 7, 2008 読書 |

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