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2008/01/30

照柿

★高村薫の本は割と好きです。
 とても女性とは思えないクールなタッチが好きです。

★主人公はたいてい男性ですが、外見はいつも骨太な感じでありながら、中身は繊細で弱さと強さを併せ持つ感じがかっこいいんです。
 もしかして、そんな男を主人公にしてしまうあたりが、女性的なのかもしれないですね。
 「こんな奴いね~よ」なんて声が聞こえそうです。

★この『照柿』には二人の男がでてきます。
 工場で管理責任者として働く達夫と、警視庁本部で働く雄一郎。
 二人はともに三十代半ばであり、ともに結婚はしたけれど、片や家庭は冷め切っており、片や既に離婚しています。

★実は二人にはある共通点があり、二人がであった瞬間から、悲劇が始まっていくというストーリーなんです。

★強く印象に残るのは『照柿』という言葉です。
 この“照柿”とは、色を表す言葉だそうで、燃え盛る炎の色であり、夕焼けの真っ赤な空の色でもあります。

★私にはその色が中年を目前にした30代半ばの男たちの上から照らす色のように見えました。
 上からは若いといわれ、下からはおっさん扱い。
 それなりにキャリアを積んできたけれど、人生に決して満足はしていない。
 しかし少しずつ日は暮れはじめいる・・・。
 最後に暴れてやろうかと思える照柿色。
 つねにストーリーのバックには赤々と燃える照柿色が見えました。

★さらに、二人の主人公が同世代だけに、心情的にもガッツリのめり込んで読んでいました。
 まぁ、二人とも、私なんかよりよっぽど立派な人生送っていますけど。
 そんな立派な人生を送っているような人の裏にも思い出したくない過去があり、日頃はそこに蓋をして何事もなかったかのように暮らしているけれど、ちょっとしたきっかけで蓋が開いてしまうと、パンドラの箱を開けたみたいに狂気が生まれてしまうのです。
 対照的な達夫と雄一郎。
 でも、一旦箱が空いてしまうと、それからの人生どちらも十字架を背負うはめになってしまう。
 最後まで心理描写を見逃せず、最後の最後までのめり込みました。

★読み応えのある本を読みたいときにオススメです。

1月 30, 2008 読書 |

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